ひさしぶりに、眼鏡で、電車先日、友だちにふと 眼鏡似合わなそうだよね、と、言われた そう言われると、不思議なもので かけて、外にでたくなったそう言われたことが嫌だった、というわけではなく なんかダメそう、と言われると、 実際ダメだとわかっていて…

今年の初め トランジットのため降りた、パリで ジャン=ポール・サルトルの、お墓参りに行った しとしと雨の降る、寒い日で パリの街はほの暗く モンパルナス墓地も、灰色に霞んでいたたくさんの墓標の前を、通り過ぎ サルトルを、探した ポケットから出した…

書くことは、十のうち九は間違えることです。精神というのは、二つの可能性という二本の柱の間で振子のように振動する狂気のようなものです。作家がどちらかをはっきり選ぶとき、言葉として、あるいは詩的、ロマンチックな面においてのみ、もっとも好ましい…

左胸の痛みから、まったく解放されず 途方に暮れる、この頃本を手に持つことすら、つらい時間帯もあるので 読書もおざなりになっていた だけど、それではやっぱり、 なんとなく荒んでしまうものだそんなわけで、昨夜は、痛みで眠れないのをいいことに 朝方ま…

ミコノスとサントリーニに思いをはせる 8月最後の日 1973年に出版された、 “世界の村と街”というシリーズを知ったのは 近所の古本屋でだった モノクロの写真も多く、けして華やかと言える本ではないけれど その中身、誠実さにも感じる重みに、惹かれたそのと…

ガンガン鳴る頭に、目を開けていられず 本を読むこともできなかった夜 ブローティガン『愛のゆくえ』を持ってきて 頭の横に置いてみる もう何度も読んでいるので、 そこにあるだけで、ふわふわと印象を浮かべられるのだ無名の人びとが書いた、世界に一冊の孤…

パン屋さんとお茶屋さんに寄り 友だちの家にでも行くような気軽さで、ネイルサロンへ 優柔不断なわたしは 妹のセンスとネイリストさんの技術に乗っかり 椅子の背にもたれてお喋りをするだけ そんなので、たいへん申し訳ないのだけれど、 星空に七色の花火が…

昨夜つくっておいた、ミントのゼリーに サイダーをかける、昼下がり暑さに、すっかりまいっているわたしだけれど 概念としての夏は、存分に、愛でる 夏といえば、思いだす本がある トーベ・ヤンソンの“Sommarboken(夏の本)”題も、発想も、中身も、細部にい…

病院の帰り いつもの古本屋の、海外文学の棚で ミヒャエル・エンデ『モモ』の、ドイツ語版を見つけた子どもの頃ずっと、実家の本棚の目立つ場所にあった、 岩波の重たい本と、同じカバー絵エンデを原書で読む、というのは いつか、やってみたいことのひとつ…

ずいぶんと昔の、桃井かおりのエッセイを いま、読んでいる このエッセイを知ったのは、数日前 古本屋で買った、メルヴィル特集のユリイカだった 1977年4月号その冒頭に掲載されていた、短い連載に 文字通り、釘づけになった “馴れ、って事がありますから、 …

午前中の用事が終わり 一泊旅行へ出る両親を、見送る家で本を読み 外へ出て本を読む じっと一点を見つめたような、午後 喫茶店で読んでいたのは ハティビ『異邦人のフィギュール』の冒頭 去年の夏に古本市で買っていたのだけど 重いので、スウェーデンへ持っ…

きのうのリージェンツ・パーク 美しい、紫色のガーデンバラ園は、ちょうど、満開 池のほとりで、鳥たちが嘴を仕舞って眠っていた こうして、公園を散歩したり いつもとちょっと違う界隈で、新しい店をみつけたり 大学のカフェで、ぼんやりしたり 親しんだ本…

この旅の目的地 美しい、アラン諸島、イニシュモア 牛と馬と いたるところにある、石垣 岩の隙間から伸びる植物 ケルトの十字架断崖絶壁に立って 吹き飛ばされそうな強風にさらされた アラン島は、想像していたよりも ずっと、過酷な土地だった この島々には…

アイルランドを横断して訪れた、ゴールウェイで 最高の本屋を、見つけた 外観からだと、わからないのだけれど ワンフロアにしては、かなりの広さがある 部屋は、ジャンルごとに分けられていて 棚には新刊と古本が、混ぜて並べられていた古本の値段は、とても…

公園、喫茶店、本屋や古着屋 好きな場所だけを繋いで、ひたすら、歩く ここへは、もう当分来られない 三日間、澄んだ青空が広がりつづけてくれたから わたしのストックホルムの残像は、明るいものになった一昨年、この町を離れた日の朝は 霧で、笑ってしまう…

小雨の土曜日 早起きして、坂道を下り 電車に乗って隣町へ出かけるとくべつ何をするわけでもなく 馴染みのカフェで、朝食がわりの甘いもの ここはいつも混んでいるのに、 今朝は何故か誰も居らず、ひっそりとしていた きょうの文庫本は 先月ストックホルムに…

五日間の旅が、終わってしまったイースターまでがんばれば旅だ、というのが 先月半ばくらいから、ずっとあって だから、なかなかの喪失感なのだけれど 旅が終わるときというのは、毎度こんなものかもしれない わたしの旅は、だいたいいつも、 移動と、なにも…

朝一番の飛行機で、ヘルシンキへ ヘルシンキでまとまった期間を過ごしたのは、9年前の夏 その前にも後にも、何度かこの町へは来ているけれど あの夏の記憶が強すぎて、 何を見るにも、どうしても思い出フィルターがかかってしまうでも、まあ、それだけ9年前…

先週末、ストックホルムへ行ったとき 市庁舎のそばの愛する古本屋で、ひさしぶりに買い物をした 土日がどちらも休みなので、 一昨年の11月からいちども行けていなかったのだ買った本は、3冊 北欧の植物図鑑、民族衣装の資料、 それからこの、美しい挿絵の入…

いつも通り片づけをして いつもと違う道を散歩する抜けるような青空の なんでもない日曜日 このところ、ずっと、細々と ペソアの『不穏の書、断章』を読んでいる 開けたところを、気の向くままこの本は、どうしても恋しくなって 年始に日本から持ってきたも…

昨年末から、すこしずつ読んでいた ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』を、読み終えた 一気に読むことができなかったのは これが、わたしにとって、とても危険な本だったからだ わたしは、“共感”が言葉としても概念としても好きではない けれど、この本に対し…

半日のパリ 早くから起きだし、ヴァンヴへでかける なんだかんだ、見やすいので 曜日が合えば毎回来る蚤の市だ 道の両端のストールを物色しているうちに 霧のような雨が降ってくる すこしずつ、粒が大きくなって 洗ったばかりの髪を濡らしていくいつものパン…

一世紀前の民族衣装をひたすら測って 図面に落とす、一日夕食のあと、ふらふらと教室に戻り 先週までにやり残していた作業 三歩進んで二歩下がる、という感じで さらに疲れて、部屋へ帰る一時帰国から戻る週に、評価日があるので やっておかなければいけない…

雨の水曜日雪も、すっかり溶けてしまって 鬱々とした雲だけが、遠くの湖を包む昨日からの、重たい気持ちも ぜんぜん、晴れる気配がない それで、夕食のあと 小屋に籠って、楽しみにしていた本を読むことにした 半分読んで、あとは大事に残していた トルーマ…

こんな一日だった、を、語る一枚 先週は、めちゃくちゃ忙しくて、 異常なほどのテンションで皆、無理矢理乗り切っていた それが解けてしまった今週は、自由になる時間は多いのに なんというか、えも言われぬ閉塞感があったとはいえ、今日からまた週末 月曜に…

ポーランドとドイツを旅する予定の友だちからのメールに 村上春樹の『遠い太鼓』を買ったよ、 旅行のために置いてます、と書いてあって そわそわと、嬉しくなる わたしの手元にある『遠い太鼓』は 控えめに言って、ボロボロだ カバーは表も背も折り返しで切…

スウェーデン語に疲れた夕方 近所のカフェで、コーヒーを飲みながら ボフミル・フラバル 『あまりにも騒がしい孤独』を、読み終える この物語の主人公、ハニチャは 三十五年間、故紙を水圧プレスで押しつぶす仕事をしている そんな中で、こっそり三トンもの…

高台に、ひっそりと、ちいさなかき氷屋がある 色とりどりのシロップの中から、よもぎを選んで 町を見下ろしながら、氷を口に運ぶだけど、味がしない 冷たくもない ただ、目の前の氷のかさだけが すこしずつ、減っていく 昨日、妹とかき氷を食べそこねたから…

台風が過ぎようとする 雨の金曜日 午後、ずぶ濡れになりながら 大きな郵便局に、必要な書類を取りにでかける帰り、本屋で なにかがぷつんと、切れる 好きなタイトルの文庫本を、やさしげなものばかり五冊買い ざあざあ降りの外に出る よく行くカフェで まず…

ロンドンから送っていた荷物が届いた洋服と、食器がいくらか 4月5月と寒すぎたので買った、綿のブランケット あとは、ほとんど本だ ずっとほしいと思っていた East of the Sun and West of the Moon カイ・ニールセンの挿絵が息をのむほど美しい小学生の頃、…