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さて、今年もカレンダーの販売がはじまり
繁忙期というひとことでは片づけがたい、
常軌を逸した仕事量になっている

とはいえ、カレンダーを注文してくれる人、
楽しみにしてくれている人が、これだけいてくれるのだということが
ただただありがたく、心を動かされる
この高揚感は、ちょっとしたお祭りみたいなものだ

検品して、袋詰めをして、梱包して送る
わたしにとっては、この仕事は、
その繰り返し以上のなにか


恒例のカレンダー、というのは
スウェーデンでは、全国あちこちの本屋などで扱っているもので
わたしがはじめて買ったのは、留学中
ルンド大学の敷地内にある、チャペルを改装した、
ちいさな文具店で売っていたからだった

店をはじめた年の秋、
このカレンダーをどうしても扱いたくて、作っている人たちに連絡を取り
卸売をしてくれる人を紹介してもらった
それから4年、すでにそれなりの付き合いの長さになっている

印刷のときに擦れたあとが、ほとんどの個体にあるうえ
毎年梱包が雑でB品が大量に出るので、販売が難しいカレンダーだけれど
それでも、届けられることがうれしいんだよ

これを、誰かに届けてみたい
そういう単純な思いが、わたしのベースになっていることに
カレンダーを包みながら、あらためて気がついた


大学の、あの文具店は、
3、4年前にルンドを訪れたときには、一時的に閉じていた
その後、また開けているんだろうか

今、普通にスウェーデン語で仕事をするようになっても
悩み抜いたルンドでの日々、あの文具店とそこで出会ったカレンダーは
やっぱり、特別

 

夕方、もうすぐいったん閉じてしまう、馴染みのカフェへ
きょうも静かに本を読み、すこし文章を書いて、
ここでの残された時間を、大切に使う

帰りの挨拶をしながら、
思わず、もう真っ暗ですね、と口にする
いつもだいたい同じくらいの時間に店を出るので、
手にとるように、日の長さの変化がわかるのだった

そとに出ると
惑星と一等星が散っている空に、冴え冴えとした月
秋だ、と、思う


イヤホンを耳に挿し、ちょっと考えて、
まわりの景色にも気分にも合わない、明るい曲を選んだ

今だけは、かなしさが追いついてこれないように、というと
センチメンタルすぎるかもしれないけれど、
機微を吹き飛ばし、明るすぎる月を目指して歩くというのも
たまには、いいでしょう