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さわやかに晴れわたる、遠い空
来週には満開になりそうな桜を横目に、
本を携え、カフェへ歩いていく

日曜から、朝も夜もなく仕事をしていて
きょうも午前から忙しかった
なんとか死守した、午後の一時間を
静かな時間にしたいという、執念


軽やかなティラミスを食べ、
あとは、読書
須賀敦子の文章に出てくる、ジョッティという詩人を思い
この世を、わたしを覆うかなしみについて、考える

わたしのまっすぐ前の席では、
つんつんとした髪の男性が、じっと文庫本を読んでいた
なにを熱心に読んでいるのか、すこし気になったけれど、
ひとの領域をうっかり覗き見てはいけないと、目を逸らした

こんなに天気のよい日に
なによりも、ほの暗い場所で本を読むことを選ぶ
そういう人間は、わたしだけじゃないんだという
あたりまえのことに、なんだか救われた気がした


こういう苦しみが、ずっとつづいていくのなら
どうして、正気でいられるだろう
発することのない言葉が溜まって、鉛のように胸に沈んでいく
抱えて歩くにはあまりにも重すぎる

それでも、また明日もきっと朝は来て
なにもかもに愛をもって向き合いたいと、気を取り直す
だけど、気を取り直せないときが来たらどうするんだろう

本は、ひとときの静けさは、
いつまで、わたしのことを助けてくれるだろう

 

書けないことばかりだと思うのは、
わたしが何かを書くことで、傷をつけたくないものが沢山あるから
それ自体は、いいことなんじゃないかと思う
わたしは、それだけ真剣に、
自分の店や仕事を大切に思っているということだ

だから、すこしだけ
この場所が、自分から完全に離れてしまわないように