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スウェーデンの、森のなかの工芸学校
一年のコースを修了するすこし前に、
授業の一環で、先生がとある古着屋に連れていってくれた

湖のほとりをずっと車で走って
たどり着いた、一軒家
家はぽつぽつとあるけれど、ほかに店はないような場所で
その地方らしい壁をした、異様に大きな家だった

中に入ると、一階にも吹き抜けの二階にも、所狭しと古着
状態もよく、デザインも心をひかれるものばかりで
比喩ではなく、頭がくらくらしたのを覚えている
課題で、特定の年代の服を探してくるようにと言われたものの
浮き足立ってしまってどうしようもなかったな

多くの国の多くの町で、古着屋を訪ねていても
あそこより魅力的な店にはその後出会ったことがないし
そもそも、あの店より商品数の多い古着屋をわたしは知らない

たった一度訪れただけだから
もう、夢を見ていただけという気もするけれど


そのとき買ったワンピースは
工芸学校の修了式で、はじめて袖を通した
それからは普段の日にも普通に着ているものの、
今の仕事場があるビルのレセプションもこれで出たし
ちょっとだけ特別な、節目を見守ってくれる服だという気がしている

きょうは、姪の七五三
やっぱり選んだのは、このワンピースだった
わたしなりに、気持ちの入った服で出かけたかったのだ

あの店を訪れたときには
想像すらしなかった、きょう

 

時の流れについて考えることが、苦手、というか
わたしは正直なところ、ちゃんと考えることができない
だって、こういうことに真っ正面から向き合って
どうして正気でいられるんだろう

だけど、三歳になった姪を前に、
重ねてきた歳月のこと、この先のことを思わずにはいられない
時間は、きっといつまでもわたしの味方にはならないけれど
彼女の成長を見られるなら、それを覚えていられるなら、と


“時は十分すぎる時間をかけて
移ろうことを知るべきである

我々は天から授かった力によって
遠い記憶を眼の前に感じることが出来るのだから”

今年出会った、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を
何度でも繰り返す


この道に、ぎっしりと記憶を敷き詰めるようにして
きっと、すこしずつは、強く