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果てのない青空に抗えず
積み上がる仕事を置いて、外へ

そっと通っていくやさしい風
まだ昼間なのに、夜のように秋の虫が鳴いている


今年2度目の盛りを迎えた、バラ
春は、ちょうど店を閉じているときだったか
現実と幻の境界がどうにもあいまいで、
どんな言葉にも繋がらないような靄を抱えていた

いまは、あのときより
自分の輪郭がハッキリはしている
そのかわり、我を失うような忙しさではあるけれど

 

真っ白の一角にひかれて近づく
アイスバーグ、ドイツ作出、という看板の文字を
思わず、Iceberg、と口のなかで繰り返す

近くで写生をしていた中学生が、目の前を
鮮やかな水色に染まった筆洗を抱えて歩いていく
青い花のないバラ園で、この色ということは
きっと、さっきまで、空を描いていたんだろう

筆洗と制服のシャツ、赤いタータンチェックのスカートが
しばらく、残像のように、白いバラの中に浮かんでいた


ベンチに座って
耳を澄ませ、目を閉じる

夜中まで働く日が、また続いているからか
手をとめていると、不安になる
だけど、すこし休まなくちゃ

また目を開けると、夢のようにバラが咲いていて
ふわふわと心もとない

 

昨日今日は、たくさんのマグカップを送り出した
実物を見たことのない方も、
どうか気に入ってくれますようにと、強く願いながら

わたしの気持ちなど、乗せないほうがいいのかもしれないけれど
やっぱり、特別な商品
気軽な会話でごくあっさりと、作ることが決まった場面を
生き生きと思い出す


このさわやかな空気も、光も
一緒に包んで、届けられたらいいのにな

そう思うほどの、澄んだ秋晴れの日に
この仕事ができて、よかった