ミュンヘン、そしてザルツブルグを経て
コペンハーゲンへ飛んできた
尋常ではない量の荷物を抱え
多すぎる移動に、へろへろ
それでも、あちこちへ飛んでいくのは、
自分にできる限り、多くのものを見たいからだ
そこにしかない美しい風景に
さまざまなことを乗り越えて、
そこにありつづけてくれるものに、救われる
わたしは、いつだってそう
毎度のことだけれど
コペンハーゲンで仕事をするために泊まっているのは、マルメ
スウェーデンの南端にほど近い町だ
マルメのほうが宿が安いというのが大きいけれど
言葉も、大きな理由
デンマーク語ではなくスウェーデン語で話せるというのは、
それだけで、ストレスがかからない
ドイツから、デンマーク、そしてスウェーデンに入ると
語学力がグラデーションになっていて
すこしずつ、気持ちが解けていくのがわかる
それと同時に、自分のなよっちいドイツ語に
いいかげん情けなくもなる
やっぱり、まとまった時間をとって
きちんとドイツ語の底上げをしないといけないな
わたしはこの仕事を続けていくつもりだし、
もともと専門ではないけれど、ドイツにも行き続けるつもりで
これを中途半端にしておくには、人生は長すぎるのだ
きょうは、一日、コペンハーゲンで仕事
とにかく風が強く、吹き飛ばされそうになりながら
取引をしているガラス作家さんのアトリエを訪ねたりした
お友達の陶器作家さんも交えて、
とても楽しい時間を持つことができた
制作について、作品について、多くの話を聞くことができるのは
いまを生きる作家さんと取引をする、醍醐味だ
わたしの仕事は、どうしたって“余剰分”
たとえば、デンマークから海を越えて来た一輪挿しは
必需品ではなく、いわゆる贅沢のためのもの
そのことが、どうしようもなく辛かったり
自分の仕事に引け目を感じることも、ある
けれど、こうして作家さんたちに会うと、
ひとつのものを作るために、それぞれが、
時間を使い、技術を使い、気持ちを使っていることがわかる
だから、わたしもできることを、立場なりに
持てるものをすべて使ってやろう、と、思う
わたしにしかできない仕事では、ない
けれど、その中で最大限、
わたしだからできるということを増やせたらいいね
すでに、品切れしている色など注文をしていて
送料的に、今回のオーダー数は限界
それなのに、新色の緑たちが爽やかでとても素敵で
考えることなく、手で持って帰っていい?と訊いた
作家さんは、もちろんいいよ、とにっこり笑ってくれて
わたしが選んだひとつひとつ違う一輪挿しを丁寧に紙で包み、
小さな箱を持ってきて、動かないようにきっちり詰めてくれた
会えて話ができてよかった、またね、と
一年ぶりのハグをして、別れる
今度はきっと、あたたかく、日が長いときにきて
屋上からコペンハーゲンの街を眺めたいな
近い未来に、また会うことを想像できる
そんな人に出会えた幸運を噛みしめながら
吹きすさぶ風のなかを、歩いた