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エストニアに来るのは
思いのほか、ひさしぶり

前回は、おそらく、2013年2月
その後1度くらいは、機会があったと思い込んでいたけれど
いや、もしかして来ていなかったかも、と驚く

タリンは、5度6度は訪れていて、馴染みのある街
でも、最後の訪問から、そんなに経っていたのだな


タリンの旧市街は
最初に訪れた頃と比べると、とにかく観光化された
けれど、それがプラスに働き、建物が美しく保たれている
きちんとした手の入れられかただ

雨に濡れ、つやつやした石畳
抜け道のような小道に入り、目を凝らす
建物そのものの形や色、窓枠やドアの飾り、店の看板、
中に飾られる、お土産物のような工芸品


強い風に煽られて
灰色の雲が、猛スピードでこちらに向かってきた
細かな雨が、白い霧のようになり、横に吹いてくる

観光客の、強い赤や青のウィンドブレーカーが
きゅうに浮きあがって見える
違うレイヤーにある、街と、人

 

タリンに着いてから、旧市街でも新市街でも
たくさんの店を見て回り、エストニア人デザイナーを探した
何人ものヴィンテージディーラーに会い、
エストニアらしさを、すこしでも掴もうとした

けれど、それは、そんなに簡単なことではない
覚悟をしていたつもりだったけれど、わたしは甘く、
この土地の事情は、想像をはるかに超えて複雑だ


6年前に、この街のレコードショップの片隅で沢山見つけて以来
偏愛してきた、銅のピンバッジ

こういうのを集めてるの、とディーラーに話したら
よくわかっているじゃない、これはすごくいいものよ、
確実にエストニアのものだしね、と笑ってくれて
ちょっと、救われた


エストニアに対して強い影響力を持っていた国、文化圏は、
旧宗主国のロシアだけではない
街からも、ものからも、そのことだけはよくわかる

エストニアの人たちは
このすべてを、一体どんな風に感じるのだろう

 

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昨日は、ハープサルという町へ出かけていった
内海に面した、こじんまりとした町で
美しい木造建築が並び、海辺には遊歩道があった


ハープサルへ行ったのは
実は、この町のレース編みの技術に興味があったから
細かな模様のショールを、棒針で編む

 

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この、普段使いには優雅すぎるレースも
実はもともと、ロシアの貴族のために編まれていたものなのだそうだ
ハープサルは、150年ほど前から有名な避暑地で、
夏にやってくる貴族のお嬢さんにショールを買ってもらうといいお金になるので
どんどん華やかに、個性的にと、編み物も変わっていったのだそう

美しいものに歴史あり
良し悪しで決められることなんて
こと過去においては、そうそうない

 

わたしひとりが、すこしなにかを考えたところで
どうなるわけでも、ないけれど
けれど、せっかくこの場所を歩けているのだから
自分の届くいちばん遠いところまで、目を向けたい

旅のときには、いつも、
そんな風に、思っている