フィンランドの、どこかの地方都市
わたしは、ディーラーのだだっ広い倉庫にいる

電車の時間まで、あと1時間
山と積まれた陶器をかきわけ、
自分の店によいものを、見つけだす
近くでは、わたし以外のバイヤーも作業をしていて
その人が選んだものも、内心気になる


美しいティーセットを見つけた
フルセットで2000ユーロ
とてもじゃないけど、手がでない
でも、あまりに美しく、どうしても諦めがつかない

電車が行ってしまう、と時計を見た瞬間
なぜか、ああこれは夢なのだ、と気がつく
水底から浮きあがるように、
もがいて、眠りから覚めた


リアルすぎる夢
意識の奥底で、ずっと仕事をしているからだろうか

最後に、なにも考えずに休んだのは
いったいいつだろう

 

言葉が出てこない状態が
あいかわらず、続いている

きょうは、スウェーデン語の先生と会ったりもしたけれど
まあ、やはりというか、こちらもダメ
こういうときは、ある程度以上話せる言語は
たいてい全滅なのだ


らくな単語だけで、適当に、
ごまかして喋ってしまっていることに気がついて
いったん黙り、胸の奥にぐっと力を入れ、
また話しはじめる

ごまかすと、絶対にうまくならない
だから、ごまかさないこと
それだけを自分に課している

 

 



帰り道に選んだのは
Moln、“雲”という曲

Lugna glida de fram
För att slutligen lugnt dö
Sakta lösande sig
I en skur av svala droppar

静かに流れていった遠くの雲が
つめたい水の粒になって、消える
歌詞の美しさを、
すべてがグレーがかったきょうの風景に、溶かす


スウェーデン語の響きは
ガチガチになった頭を、そっとほぐしてくれる
どんなときでも、そう

自分のなかに、いくつも言語があるというのは
結構、いいことなのかもしれない