仕事をひと段落させ
暮れかけたそとを、眺める

この風景を見るのも
あと、数日のことだ


店をやるという道を、自分で選んだからこそ
自分では選べないことも、多く出てくる

今回の引っ越しも、まあ、そうで
でも、それもまた人生よ
こう言うと演歌みたいだけどもね



自分で買った家具のほとんどない
本で溢れた、雑然とした部屋

ラップトップの画面の向こうには
ブリストルコペンハーゲンアイントホーフェンの人たちがいて
いまさら、不思議な気持ちになる

でも、数ヶ月前には想像もしなかった景色が今あって
数ヶ月後にはまた、今想像もしない景色があるっていうのは
わたしが思っていたよりも、普通のことなんだろうな



クリスマスケーキのチラシを
もう、見かけるようになった
今年は、クリスマスに
恋人が京都にくることになっている

一昨年だっけ、クリスマスに来てくれたときは
そういえば、近所のお菓子屋さんでケーキを予約したなあ、と
ふわりと、思いだして
今年はケーキどうしたい?と、LINEで送ろうとして
思いとどまって、消してしまう


わたしたちは、平日は
基本的には連絡をとらないことにしている
お互いの仕事、生活が最優先
そのぶん、週末には、まとまった時間話をする

普段から一緒にいれば
きっと、ご飯でも食べながら、ケーキどうする?と訊いただろうな
そう思うと寂しいし、せつなくはあるけれど
実際離れて暮らしている今、
これを、きょうでなくてもいい話だな、と思えるのは
わたしたちにとっては、大切なことだという気がする


週末になったら
ちょっとだけケーキの話をしようかな
それでも、まだ11月の頭ですよって笑われそうだけど
まあいいじゃないと、笑い返そう

そんなことを考えただけで
ふと、心に空間ができた気がした