確定申告用のメモを睨み
ウェブの申告書を、埋める午後

開けたカーテンから、グレーの光が差して
暗い部屋に、粒子のように広がる
室外機を叩く、雨のおと


こんな日に、いつも、思い出す詩がある

“雨は
ガラスの花

雨は
いちんち眼鏡をかけて”

尾形亀之助の詩集を買ったのは
もう13、4年も前のことで
それでも、あの日のことは、あざやかに思い出せる

雨の日は、眼鏡、と思うようになったのは
この詩に出会ってから



恋人が、懇切丁寧に
色分けして埋めてくれた書類
それに、自分で数字を書き加えたものを見ながら
ひとつひとつ、項目を入れていく

出来上がった書類を、プリントアウト
あとは、添付書類を揃え、税務署に送るだけ
頭を悩ませてきた、はじめての確定申告も
ようやく、終わりが見えた


今回は、全部がはじめてだったから
棚卸も、総仕入れ額の計算なども、本当に大変だった
彼が経費計算と申告書のことを、昨年末にやってくれなかったら
ぜったいに終わらなかったと思う

恋人の仕事が、税務というのは
わたしにとっていちばんの幸運なのだった

しかし、ねえ
彼は毎日、こんな書類や数字を見ているのか
別世界で働いているのだな、、、



あしたは、寒さも
青空も戻ってくるらしい

この書類を、無事、送って
清々しい日にしたいものだ