なにかが自分のなかで、
派手な音を立てて、ぷっつりと切れた

なさけない話で
わたしは、昔からこういうタイプなのだ
普通に走っていたくせに、突然倒れる、というようなことを
いまだに、時々やってしまう

スウェーデン語の先生と別れたあと
愉しいおしゃべりでも埋められなかった、大きなヒビを抱えて
バラバラになりそうになりそうな気持ちで向かったのは、
京大前の、進々堂だった



ほかのすべてをなぎ倒して
持ってきた本は、ブルース・チャトウィン

人生をかけて、旅をした人
自分の足で、自分の目で、ものごとに出会って
自分自身の投影ではないものを、きちんとそこに見つけた人

チャトウィンの、透徹した、深みのある目が好きだ
あざやかな言葉が、とても、とても好き


ひとつひとつ、文章を追うと
頭に、身体に、すこし力が戻ってくる

チャトウィンは、どこまでも格好よくて
彼の書いたものには、文章以上の魅力がある
28年も前に、48歳という若さで亡くなってしまった人だけれど
生前の彼は実際に、本当に格好いい人だった、という
多くの人の回想に、うなずく

こんな風になりたい、なんて
思うことも、できないけれど
そのしなやかさを目にするだけで、救われる
わたしの神様のひとり



進々堂の、いちばんよいところは
音楽がないということ
どこへ行ってもBGMがかかっている、今
こういう店は、貴重だ

しんとしているというわけでもない
ゆるやかな静けさ


自分を宥めるのに効果のある場所というのは
なににもかえられないな、と
あらためて、思った